患者のカウンセリングで頻繁に見られる最大の誤解は、「ピルを飲み続ければ子宮筋腫が小さくなって消える」という思い込みです。
ピル(低用量ピル・超低用量LEP製剤)は、あくまで排卵を止めて子宮内膜の増殖を抑え、生理痛や出血量を抑える「対症療法」に過ぎません。病巣そのものを攻撃して退縮させる薬ではないため、ピルによって筋腫が消滅することは医学的にあり得ません。
さらに見落とされがちなのが、「筋腫ができている場所」による適応の違いです。子宮筋腫には大きく分けて3つのタイプが存在します。
- 漿膜下筋腫(しょうまくか):子宮の外側に向かって突き出すタイプ。経血量への影響は少ないが、大きくなると周囲の膀胱や腸を圧迫する。ピルの影響を受けにくい。
- 筋層内筋腫(きんそうない):子宮の筋肉の壁の中にできる最も多いタイプ。子宮が肥大し経血量が増加するが、サイズが小さければピルでのコントロールが良好に行われやすい。
- 粘膜下筋腫(ねんまくか):子宮の内側(内膜直下)に突き出すタイプ。小さくても激しい過多月経と不正出血を引き起こす。
この中で最もピル服用に注意が必要なのが「粘膜下筋腫」です。粘膜下筋腫がある状態でピルを服用すると、内膜が不均一に剥がれ落ちて予期せぬ大出血や止まらない不正出血を招くリスクが高くなります。また、ミレーナを挿入しても、子宮内腔が変形しているため器具が押し出されて抜け落ちてしまう失敗例が多発します。「筋腫があるからピル」と短絡的に決めるのではなく、自らの筋腫の「局在」を画像診断で正確に把握することが不可欠です。