バルコニーから撒かれた『檄(げき)』の印刷物、および三島が肉声で放った演説の核心は、「日本国憲法(特に第9条)の改正」と「自衛隊の国軍化」にありました。三島由紀夫の演説内容をわかりやすく要約すると、次の3つの論点に集約されます。
第一に、「自衛隊は現行憲法下で違憲の存在として放置され、日陰者扱いされている」という現状への激しい憤りです。三島は、命を賭して国を守るべき軍隊が法的に正当化されず、政治の道具として扱われている欺瞞を鋭く告発しました。
第二に、「経済的繁栄に溺れ、精神を骨抜きにされた戦後社会への警告」です。高度経済成長の中で物質的な豊かさを追求するあまり、日本の伝統、歴史、武士道の精神を喪失していく日本人の姿に深い絶望を抱いていました。
第三に、「自衛隊員自らが立ち上がり、憲法を改正して真の日本武士・国軍となれ」という決起の呼びかけです。三島は「自衛隊を合憲にするための憲法改正などではない、日本の魂を取り戻すために立ち上がれ」と熱狂的に訴えかけました。