映画通の間で今なお熱く語られる本作最大の特徴が、「物語の時間軸に合わせて画面のアスペクト比(縦横比率)が切り替わる」という前代未聞の映像ギミックです。本作は多重構造(マトリョーシカ構造)の語り口を採用しており、時代ごとに3つの異なる比率が適用されています。
具体的には、物語が語られる1980年代(現代)は一般的なワイドスクリーン「1.85:1」、老いたゼロが作家に過去を語る1960年代はシネマスコープ規格の横長画面「2.35:1」、そして物語の本編である1930年代はクラシックなスタンダードサイズ「1.37:1(アカデミー比率)」で撮影されています。
当時の映画フォーマットを再現することで観客を瞬時にその時代へと没入させるだけでなく、ウェス・アンダーソン監督特有の左右対称(シンメトリー)構図や箱庭のような世界観を極限まで引き立てる演出設計が施されています。