鬼殺隊の隊士として前線に出ていた獪岳が鬼へと身を堕とした直接の引き金は、上弦の壱・黒死牟との遭遇でした。圧倒的な実力差を前にした獪岳は、誇りも忠誠心もかなぐり捨て、ただ「生き残るため」だけに土下座して命乞いを選び、黒死牟の血を受け入れました。彼にとっての行動規範は常に「自分が生き残ること」「自分を正当に評価させること」の一点に尽きていたのです。
この裏切りがもたらした代償は、あまりにも惨酷なものでした。鬼殺隊の長年の歴史において、「呼吸の使い手から鬼を出した」という事実は言語を絶する大罪です。育て親としての責任を一身に背負った桑島慈悟郎は、責任を取るために切腹を決断しました。
特筆すべきは、桑島が「介錯人なし」で腹を切り、激痛の中で孤独に息絶えたという事実です。介錯を頼まなかったのは、自らの指導不足に対する贖罪の念の深さを示しています。柱稽古の最中、雀のチュン太郎経由で届いた一通の手紙によってじいちゃんの壮絶な死を知った善逸は、それまでの臆病な態度を一変させ、漆黒の怒りと覚悟を宿した剣士へと覚醒しました。