テレビで見せる素顔と舞台上の姿があまりにもかけ離れているため、「影武者がいるのではないか」と疑われることすらある梅沢富美男の女形メイクの秘密。その舞台裏には、長い年月をかけて独自に開発された高度な錯視技術が存在します。
最大の特徴は、目尻の引き上げとテーピングの技術です。こめかみ付近の皮膚を特殊なテープで後方へ引き上げることで、男性特有のたるみを消し去り、切れ長の涼やかな目元を作り出します。さらに、白粉(おしろい)の塗り方にも秘密があります。歌舞伎の画一的な白塗りとは異なり、顔の中心部とフェイスラインで白さの階調を変え、立体的な小顔に見せる陰影法を駆使しています。
加えて、視線と首の角度による「流し目」は、まさに職人技です。黒目を極限まで横に滑らせ、瞬きを極力減らしながら、顎を引いてうなじを強調する。この一連の動作によって、視界に入った観客は「自分だけを見つめられている」という強烈な錯覚に陥ります。計算し尽くされた視覚的演出が、あの妖艶さを生み出しているのです。