『純情きらり』から約9年後、2015年後期の『あさが来た』で宮崎あおいが演じたのは、ヒロイン・白岡あさ(波瑠)の姉である今井(眉山)はつ役でした。すでに2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』で歴代最年少(当時22歳)の主役を務め上げ、押しも押されもせぬ大女優となっていた彼女が、あえてヒロインの「姉役」として朝ドラに帰還したニュースは世間を驚かせました。
しかし、ドラマが始まるとその意図は明白となります。名門両替商へ嫁ぎながらも、幕末維新の動乱で家が没落。夜逃げを経験し、山王寺屋の夫・惣兵衛(柄本佑)とともに泥にまみれながら農家として再起を図るはつの生き様は、華やかな実業界を突き進む妹・あさの陽の道と見事な対比を成しました。
特に、心を閉ざしていた夫・惣兵衛が心を開く過程や、母として子を守り抜く凄みを見せた名シーンの数々は、視聴者から「はつが画面に出るだけで空気が一変する」「主役を喰うほどの存在感」と絶賛されました。柄本佑との息の合った芝居は、朝ドラ史に残る屈指の夫婦ドラマとして今なお語り草となっています。
さらに2026年の『らんまん』では、全編のナレーションを担当。主人公・万太郎(神木隆之介)と妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈の生涯を、まるで温かな木漏れ日のように包み込む声の芝居で支えました。そして迎えた最終回、遺品整理を手伝う女性・藤平紀子役として画面に姿を現した瞬間、視聴者の感動は最高潮に達しました。声と実写の双方で作品の精神的支柱を務めたこの試みは、彼女の表現者としての成熟を雄弁に物語っています。