登山や山林散策を楽しむ愛好家の間で、最も識別が難しいとされるのが「コブシ」と「タムシバ(別名:ニオイコブシ)」の境界線です。ネット上のSNS投稿や植物写真でも、タムシバをコブシと誤認して掲載している例が後を絶ちません。
タムシバ(モクレン科モクレン属)は、本州から九州の深山・尾根筋に自生する日本固有種です。花弁はコブシと同じく6枚で、見た目も酷似していますが、決定的な見分けポイントが存在します。
第一に、タムシバは「花の下に葉が1枚も付かない」という特徴を持ちます。コブシの花直下には必ず1枚の若葉が展開するため、花の付け根を確認すれば即座に判定が可能です。第二に、香りです。タムシバの枝や葉を折るとアニスや柑橘類に似た甘く爽やかな芳香が強く立ち込めるため、山林現場では「噛む柴(カムシバ)」が転じてタムシバと呼ばれるようになりました。山地の険しい岩場や尾根で純白の花を無数に咲かせている個体は、コブシではなくタムシバであるケースが大半を占めます。