新一の誕生日が作品世界で伝説的な意味を持つに至った背景には、1997年に劇場公開された記念すべき映画第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』の存在があります。実は連載初期の原作漫画では、新一の具体的な誕生日がストーリーの中核としてクローズアップされたことはありませんでした。
本作のメガホンを取ったこだま兼嗣監督と脚本家の故・古内一成氏は、劇的なタイムリミットサスペンスを構築するにあたり、新一の誕生日である5月4日を事件のクライマックスに設定しました。建築家・森谷帝二が仕掛けた爆破テロの標的となった米花シティービル。その崩壊寸前のビル内に閉じ込められた毛利蘭は、日付が5月4日へと変わる深夜0時を迎えようとしていました。
蘭が新一のために用意していた誕生日プレゼントは、5月4日のラッキーカラーとされた「赤いポロシャツ」でした。深夜の映画館で待ち合わせをし、日付が変わった瞬間に手渡すはずだったささやかな贈り物が、爆発の瓦礫によって引き裂かれます。ドア越しに背中合わせとなり、トランシーバーを通じて新一(コナン)の指示を受けながら爆弾解体に挑む蘭の姿は、シリーズ屈指の名場面として語り継がれています。
そして訪れる究極の選択。設計図に記載されていなかった「赤と青の導線」の切断を迫られた際、新一は「お前の好きな色を切ればいい」と命運を蘭に委ねます。爆発を免れたあと、なぜ赤い導線を切らなかったのかと問われた蘭は、涙を浮かべながらこう答えました。
「だって……切りたくなかったんだもん。赤い糸は、新一とつながってるかもしれないでしょ?」
幼なじみとしての純粋な好意と、運命を共に引き受ける覚悟が交錯したこの告白は、単なる誕生日エピソードを超え、四半世紀以上を経た現在でも劇場版史上に残る純愛の金字塔としてファンの胸を打ち続けています。