恋愛ドラマのアイコンから、日本のプロフェッショナルたちを鼓舞する牽引役へ――2000年代以降の木村拓哉は、数々の職業ドラマで組織と個人のあり方を問う決定的なセリフを残しています。
その筆頭が、検察庁を舞台にした異色の法廷サスペンス『HERO』(2001年、2014年)の久利生公平です。茶髪にジーンズ、通販グッズに夢中という型破りな外見の裏で、久利生が貫く検事としての矜持は誰よりも硬質でした。HERO久利生公平名セリフとして多くの法曹関係者にも引用されるのは、取調室や法廷で静かに語りかける場面の言葉です。
「裁判官も、弁護士も、僕ら検事もミスをすることがある。でもね、人の人生を預かってるってことだけは絶対に忘れちゃいけないんだ。僕らが一歩間違えたら、無実の人間が刑務所に入ることになるんだから」
肩書や前例主義に安住する官僚組織を鋭く撃ち抜くこのセリフは、コンプライアンスや形式主義に縛られがちな現代のビジネスパーソンにとっても強烈な教訓を突きつけます。巨悪を断罪する派手なカタルシス以上に、「個人の人生に対する絶対的な敬意」を久利生の肉声として届けた点に、この作品の普遍性がありました。
一方、航空業界を舞台にした『GOOD LUCK!!』(2003年)では、副操縦士・新海元のストレートな情熱が視聴者を熱狂させました。グッドラック名シーンとして名高い、トラブルに見舞われたコックピットでの緊迫したやり取りや、堤真一演じる冷徹な監査官・香田キャプテンとの対立の中で放たれる「ぶっつけ本番で行くしかない」という覚悟。安全運行という巨大なプレッシャーの中で、自らの技術とチームへの信頼を全開にする姿勢は、全日空への就職希望者を激増させるほどの影響力を生みました。
さらに野島伸司脚本のスポーツドラマ『プライド』(2004年)では、アイスホッケーチームのキャプテン・里中ハルが口にするプライドメイビー木村拓哉のフレーズが印象的です。「Maybe...(かもしれない)」と軽口を叩きながらも、勝負の瀬戸際では「Must be!(そうに決まってる、必ずやり遂げる)」へと反転させる言葉の妙。傷つくことを恐れて本気を見せない現代人の防衛本能を打ち破り、覚悟を決めて泥臭く氷上に立つ男の美学は、20年以上の歳月を経てもなお色褪せません。