もののけ姫の舞台は屋久島だけ?白神山地や島根に眠る着想の真相を追う

もののけ姫の舞台は屋久島だけ?白神山地や島根に眠る着想の真相を追う

もののけ姫の舞台は屋久島だけ?白神山地や島根に眠る着想の真相を追うとはどんな影響があるのか? 専門的な分析を丁寧に紐解いて紹介します。

インターネット上の旅行記やSNSでは「もののけ姫の舞台=屋久島」という図式が広く定着していますが、スタジオジブリが公式見解として提示している事実は、それよりもはるかに広範かつ立体的です。スタジオジブリ公式サイトの作品解説において、公式に「大いに参考にした場所」として明記されているのは、「屋久島(鹿児島県)」と「白神山地(青森県・秋田県)」の2箇所です。

制作当時、宮崎駿監督をはじめとする中核スタッフ陣は、1995年5月に屋久島へ大規模なロケハン(現地調査)を敢行しました。しかし、それに先立つ企画段階において、宮崎監督は東北地方の白神山地にも足を運んでいます。監督自著『折り返し点 1997〜2008』や当時の制作インタビューにおける発言を紐解くと、映画の根本にあるのは「特定の観光地のアニメ化」ではなく、「人が足を踏み入れることを拒んできた太古の日本列島の原風景」の再構築でした。

宮崎監督は、人間が自然を都合よく開発・管理する以前の、鬱蒼とした生命力と死の気配が同居する空間を描き出すため、西南日本の照葉樹林文化を象徴する屋久島と、東日本・北方系の落葉広葉樹林文化を象徴する白神山地という、日本の自然生態系の両極を意図的に衝突・融合させました。「舞台は屋久島である」という言説は間違いではないものの、それは作品を構成する巨大なモザイク画の重要な一片に過ぎません。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。