なぜトルコリラはこれほどの高金利を提供し続けられるのか。その本質を理解するためには、トルコ経済が歩んできた激動の金融史と、インフレーションの構造的メカニズムを直視しなければなりません。
かつてエルドアン大統領は「金利は諸悪の根源であり、高金利がインフレを招く」という非正統的な経済理論を掲げ、物価が急騰する局面で中銀総裁を立て続けに更迭して強引な利下げを強行しました。その結果、トルコ国内の消費者物価指数(CPI)は一時前年比80%超というハイパーインフレ寸前の狂乱物価に突入し、リラは天文学的な暴落を記録したのです。
大きな転換点となったのは、メフメト・シムシェキ財務相や米ウォール街出身の金融エリートが経済チームの中枢に登用された改革以降です。トルコ中央銀行(TCMB)は正統派金融政策へと舵を切り、政策金利を50%という歴史的高水準まで一気に引き上げました。これによって外貨準備の回復や海外投機筋からの資金回帰が一部で見られ、国際信用格付け会社による格上げなど、一定の市場正常化が進展しました。
2026年現在の金融動向においても、トルコ中銀は慎重な姿勢を崩していません。インフレ率はピークアウトしたとはいえ、国内のサービス価格の粘着性や最低賃金引き上げに伴うコストプッシュ圧力は依然として根強く、中銀は実質金利をプラス圏で維持するための引き締め姿勢を堅持しています。
しかし、ここで個人投資家が見落としてはならない経済原則が「購買力平価説」です。二国間のインフレ率に著しい格差が存在する場合、インフレ率の高い国の通貨は、購買力を均等化させるために長期的には減価し続けます。日本がデフレを脱却したとはいえ年率2〜3%前後の物価上昇率であるのに対し、トルコが依然として二桁台のインフレを抱えている以上、トルコリラ円の為替レートには構造的な下落圧力が恒常的にかかり続けるという宿命から逃れることはできません。