「デビットカードがあればクレジットカードは一切不要」と考えるのは早計です。決済インフラの構造上、デビットカードには決定的な死角が存在します。その最たる例がガソリンスタンドと高速道路のETCカードです。
なぜガソリンスタンドでデビットカードが使えない、あるいは敬遠されるのか。原因は「オーソリゼーション(事前信用照会)」のタイムラグにあります。ガソリン給油は、給油ノズルを戻すまで正確な請求金額が確定しません。一部の銀行デビットでは対応しているものの、口座内に「1万円以上の残高キープ」が必須条件であったり、引き落とし処理が数日後に行われる変則的な処理が挟まるため、システムトラブルや残高不足を避けるために門前払いにしている給油所が少なくありません。
さらにETCカードに関しては、物理的な安全性の問題からデビット対応がほぼ不可能です。時速数十キロで進入してくるETCレーンの開閉バーは、わずか0.1秒単位で通信処理を行っています。この瞬間に銀行サーバーへアクセスして口座残高を確認する処理を行っていては、通信遅延でゲートが開かず大事故を引き起こしかねません。そのため、後払いで確実に支払いを保証できるクレジットカード会社の発行するETCカードが事実上の必須条件となっているのです。
加えて、見落とされがちなのが不正利用時の補償制度と資金拘束リスクです。クレジットカードの場合、万が一カード番号が盗用されても、翌月の引き落とし日までに異議申し立てを行えば、自分の現金が減ることはありません。しかしデビットカードの場合、不正請求された瞬間に口座から実弾(現金)が引き出されます。規約に基づき最終的に補償・返金されるとしても、銀行の調査完了まで1〜2か月を要することも珍しくありません。その間、家賃や公共料金の引き落とし口座が空っぽになってしまうという「キャッシュフロー凍結の恐怖」は、デビット特有の最大リスクといえます。