肺コンプライアンスが著明に低下する最大の原因は、肺胞の虚脱、肺実質の線維化、あるいは肺組織の間質浮腫です。
代表格がARDS(急性呼吸促迫症候群)です。重症肺炎や敗血症などを契機に肺毛細血管の透過性が亢進し、肺胞内に水分やタンパク質が漏出。さらに肺胞の表面張力を下げて虚脱を防ぐ「肺サーファクタント」が機能不全に陥ります。結果として肺胞がつぶれ、含気部分が極端に狭まる「ベビーラング(Baby Lung)」と呼ばれる硬く小さな肺となり、コンプライアンスは急激に落ち込みます。
慢性的な経過をたどる疾患としては、間質性肺炎や肺線維症が挙げられます。肺胞壁を構成する結合組織が慢性炎症によって線維化し、弾力性を失ってガチガチに硬化するため、いくら圧をかけても肺が伸展しなくなります。
その他にも、心原性肺水腫、大量の胸水貯留、気胸による肺の圧迫、さらには腹部膨満に伴う横隔膜の押し上げ(腹腔内圧亢進症候群)など、肺の外側から物理的圧迫が加わる病態でも静的コンプライアンスは著しく悪化します。