SNSやQ&Aサイト、不動産相談窓口に寄せられる購入者の声をつぶさに検証すると、制度の複雑さが引き起こすトラブルの生々しい実態が浮かび上がってきます。
ネット上の口コミで目立つのは、「仲介営業マンから『ローン控除使えますよ』と口頭で言われていたのに、確定申告の段階で税理士から使えないと告げられた」という深刻なトラブルです。不動産仲介業者のなかには、税制の細かな最新要件を把握しきれておらず、「昭和57年以降のマンションだから大丈夫」と安易に答えてしまい、登記簿面積の確認を怠るケースが散見されます。
ここで、都内の中古マンションを購入した典型的なシミュレーション例を見てみましょう。
【中古マンション購入シミュレーション】 ・購入物件:築22年(2004年建築・新耐震適合)、省エネ基準適合証明書なし(一般住宅扱い)
・借入額:3,500万円(35年返済、変動金利0.6%)
・購入者:30代会社員(年収580万円、所得税納税額:約15万円、住民税納税額:約28万円)
・適用される借入限度額:2,000万円(残りの1,500万円分は控除対象外)
・1年目の年末ローン残高:約3,410万円 ➔ 控除対象は限度額の2,000万円
・1年目の控除額:2,000万円 × 0.7% = 14万円
このケースでは、年間の所得税納税額が15万円であるため、14万円全額が所得税から控除(還付)されます。もしこの物件が「省エネ基準適合」の証明を取得していれば、借入限度額が3,000万円まで跳ね上がり、1年目から21万円の控除権利が得られていました。差額の7万円分は所得税から引ききれず住民税からも減額されるため、10年間で数十万円規模の税負担差が生じます。
現場の取材からは、「リノベーション済み物件だから省エネ性能も上がっていると勝手に思い込んでいた」という購入者の誤認も確認されています。内装がどれほど美しく刷新されていても、サッシの複層ガラス化や外壁・天井の断熱材施工が伴っていなければ、省エネ基準はクリアできません。表面的な意匠と構造的な性能評価は別物であるという認識が不可欠です。