多くの飲食店街が夕暮れとともに目を覚ますのに対し、赤羽一番街の朝は驚くほど早く動き出します。この街で「昼飲み」が文化として定着した背景には、歴史的な産業構造が深く関わっています。かつて赤羽周辺には大規模な軍需工場や印刷工場、町工場が集中しており、交代勤務で夜勤を終えた労働者たちが朝方や午前中から一杯飲める場所を求めていました。その需要に応えて誕生した酒場群が、時を経て独自の文化へと昇華したのが赤羽一番街の原点です。
2026年の今、赤羽一番街の営業時間(昼)を俯瞰すると、午前中から暖簾を掲げる店舗が多数軒を連ねています。朝9時台からカウンターが埋まる立ち飲み屋から、昼前には満席になる鰻・川魚料理店まで、昼間に酒を楽しむことが街の「日常の風景」として完全に肯定されています。この圧倒的な包容力こそが、多忙な日常から少しだけ羽を休めたい現代人を惹きつけてやまない最大の要因です。
さらに特筆すべきは、物価高騰が続く2026年においても「千円でべろべろに酔える=せんべろ」の矜持が受け継がれている点です。小鉢料理が200円〜300円台、チューハイが300円前後から楽しめる価格設定は、過剰な装飾を排し、回転率と地元常連客の支えによって成り立っています。ただ安いだけではなく、長年磨き抜かれた手作りの味と店主たちの気風の良さが、赤羽一番街を単なる観光地ではない「生きた大衆酒場の聖地」たらしめています。