「お米は乾燥しているから常温で長期間放置しても腐らない」という認識は、現代の精米技術においては大きな誤解を招く要因です。玄米から表層の糠(ぬか)と胚芽を取り除く白米の精米処理は、いわば果物の皮を剥いた状態に近い無防備な構造を生み出します。お米の酸化と味の劣化理由は、空気に触れ続けることで米粒表面の微量な脂質が酸化し、古米臭の原因物質であるヘキサナールなどが発生することに起因します。
食品表示基準上、精米には賞味期限ではなく「精米時期」が記載されています。日本精米工業会などの指針を踏まえたお米の賞味期限と消費目安は、美味しく食べられる品質保持期間として以下のタイムリミットが設定されています。
・春・秋(気温15〜20℃前後):精米日から約1ヶ月以内
・夏場(気温25℃以上・高湿度):精米日から約2〜3週間以内
・冬場(気温10℃前後の冷暗所):精米日から約1.5ヶ月〜2ヶ月以内
これ以上の期間、購入時の通気孔付きビニール袋のまま常温放置を続けると、デンプンの老化によって水分が抜け、炊き上がりがパサついて甘みが激減します。さらに深刻なのが衛生面のリスクです。梅雨時から夏場にかけて室温が20℃、湿度70%を超えると、わずか0.5ミリの隙間からノシメマダラメイガやコクゾウムシといった害虫が袋の微細な穴を破って侵入します。ワンルームの流し台の下やガス台周辺など、熱気と湿気がこもりやすい場所での長期放置は、虫害とカビの発生リスクを著しく引き上げる行為に他なりません。