荒汐部屋の朝稽古。静寂を切り裂く鈍いぶつかり合いの音の中で、彼の存在感は際立っている。三役・幕内力士となった弟たちと胸を合わせる稽古は、もはや角界最高峰の攻防と言っても過言ではない。
立ち合いの鋭さ、左差しの絞り、土俵際での残し。弟たちの得意手を熟知しているからこそ、容赦ない攻めを見せる。稽古場で長男に追い込まれる経験があるからこそ、弟たちは本場所の土俵でどんな強敵にも怯まない精神力を養うことができた。「兄貴の立ち合いが一番重い」。弟たちがふと漏らす言葉に、長男への絶対的な敬意と畏怖が滲み出る。