物語の終盤、逃亡の果てに低体温症に陥ったアデラインは、除細動器の強力な放電によって蘇生を果たす。この劇的なクライマックスは、単なるご都合主義のハッピーエンドではない。1930年代の寒冷な水難事故で彼女の細胞分裂を停止させた「異常放電」と、2010年代の救急医療による「除細動の電撃」。ふたつの雷鳴が対を成すように設計された、緻密な構造美がそこにある。
ラストシーンで彼女が鏡を覗き込み、一筋の白髪を見つけて微かに微笑む瞬間。あれは不死という呪縛からの解放、すなわち「死に向かって歩む普通の人間」へと回帰できた喜びの象徴だ。他者と共に歳を重ね、共に消え去ることのできる平穏。この結末の真相こそが、本作を凡百のタイムトラベルものやラブロマンスから一段高い領域へと引き上げている。