函館市内観光の王道ルートとして多くの旅行ガイドで推奨されているのが、函館市電を利用したアプローチです。最寄りの「十字街」電停で下車し、山麓駅までの所要時間は徒歩およそ8分〜10分と案内されています。しかし、この平坦な数字の裏には、実際に歩いた者だけが知る過酷な現実が隠されています。
十字街電停を降りてロープウェイ山麓駅へ向かうルートは、函館屈指の急勾配として知られる「南部坂」をひたすら登り続ける道筋です。斜度にして10度を超える急坂が約300メートルにわたって続き、歩行者の息を激しく奪います。春から秋にかけての好天時であれば歴史的な石畳や教会群を眺めながらの散策として楽しめますが、大型のスーツケースを引きずりながらの登坂は極めて困難です。さらに冬期はロードヒーティングが途切れる区間が路面凍結し、転倒事故の危険が跳ね上がります。
体力を温存したい場合や天候不良時は、公共交通機関の代替ルートを賢く選択する必要があります。函館駅前バスターミナルから発着する函館バスの「函館山ロープウェイシャトルバス」(2系統など)を利用すれば、急坂を一切登ることなく函館山ロープウェイ山麓駅バス停の目の前にダイレクトで到着できます。所要時間は約11分、運賃も大人数百円程度と極めてリーズナブルです。
また、グループや家族連れであればタクシーの積極的な活用が推奨されます。JR函館駅前のタクシー乗り場から山麓駅までは、道路が順調であれば乗車時間約10分、メーター料金は約1,500円〜2,000円の範囲内に収まります。坂の下で立ち往生して貴重な夕暮れの時間を浪費するコストを考慮すれば、極めて費用対効果の高い選択肢です。なお、山麓駅正面にも専用のタクシー乗り場が整備されており、帰りの迎車や待機車両の確保にも対応しています。
身軽に観光を楽しみたい旅行者にとって重要なのが手荷物の扱いです。山麓駅の1階フロアにはコインロッカーが完備されており、標準的な小型・中型ロッカー(300円〜500円程度)のほか、スーツケースを収容できる大型サイズも設置されています。ただし、夕方のピーク時には駅舎内のロッカーが埋まるケースもあるため、大きな荷物はJR函館駅構内や宿泊先ホテルに預けてから向かうのが確実です。