青い森鉄道が直面する構造的な課題を紐解くには、約四半世紀前の歴史に立ち返る必要があります。2002年(平成14年)5月28日、東北新幹線盛岡〜八戸間の開業に伴い、並行在来線となる目時〜八戸間について国土交通省から青い森鉄道への第二種鉄道事業(旅客運送)および青森県への第三種鉄道事業(施設保有)の認可が下りました。その後、2010年の新青森開業に合わせて八戸〜青森間も移管され、現在の営業体制が完成しました。
しかし、同社の決算公告や経営状況の推移を見ると、慢性的な赤字基調から脱却することは容易ではありません。その最大の理由は、単なる人口減少による旅客減少だけではなく、「JR貨物との共走に伴う莫大な線路維持管理費」という特異な構造にあります。
青い森鉄道線は、本州と北海道を結ぶ青函トンネルへと連なる日本列島の大動脈物流ルートです。旅客列車よりもはるかに重いコンテナ貨物列車が、昼夜を分かたず高頻度で走行しています。レールやバラスト(砕石)の摩耗スピードは旅客列車単独路線の比ではありません。それにもかかわらず、鉄道事業法上の「アボイダブルコスト(回避可能経費)ルール」に基づき、JR貨物が支払う線路使用料は低廉に抑えられており、保守管理コストの多くが地元側に跳ね返る仕組みとなっています。
この重い負担を支えるため、青森県交通戦略課内に事務局を置く「青い森鉄道線利活用推進協議会」が中心となり、沿線自治体と一体となった公的支援や利用促進キャンペーンが粘り強く続けられています。地方の一私鉄の枠を超え、国家の物流サプライチェーンを青森県が下支えしているという社会的リアリズムを理解することこそ、この鉄路を深く味わう視点といえます。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
取材とデータ分析から導き出した、青い森鉄道の旅を心から楽しめる人と、別の移動手段を検討すべき人の明確な判断基準を提示します。
【選ぶべき人(旅の満足度が最大化する層)】
・土休日を中心に、八戸〜浅虫温泉〜青森を途中下車しながらのんびり周遊したい人
・「青い森ホリデーフリーきっぷ」を活用して交通費を劇的に圧縮したい賢い旅行者
・陸奥湾のパノラマ車窓や、モーリーの意匠、地方鉄道ならではの温かい旅情を肌で味わいたい鉄道愛好家
【利用に慎重になるべき人(新幹線や高速バスを検討すべき層)】
・全行程をSuicaなどのICカードタッチだけで手軽に済ませたい人(きっぷ購入を億劫に感じる人)
・青春18きっぷで移動しつつ、ルールを把握せずに浅虫温泉などの中間駅で途中下車を予定している人
・冬期の降雪時に分刻みのタイトな乗り継ぎスケジュールを組み、遅延リスクを許容できない出張者