日本の家庭で粉チーズといえば、誰もが一度は目にしたことがある緑色のパッケージを思い浮かべるだろう。このスタイルを世界中に普及させた立役者が、20世紀初頭に加熱殺菌プロセスチーズの特許を取得した実業家ジェームズ・L・クラフトである。彼の革新的なアイデアは、傷みやすかったチーズの保存性を格段に高め、流通の姿を劇的に変えた。
現在、クラフト・ハインツをはじめとする大手企業が手掛ける粉チーズは、世界の食品・乳製品産業において不可欠な存在となっている。冷蔵設備が十分に普及していなかった時代から、手軽にチーズの旨味を食卓へ届けてきた功績は計り知れない。ただし、保存性と利便性を最優先した工芸品としての粉チーズと、伝統的な職人技が息づくナチュラルチーズでは、目指すベクトルが根本的に異なるという事実は覚えておくべきだ。