大きな転機となったのは2016年の「ヘイトスピーチ解消法」の施行である。本法は不当な差別的言動を「許されないもの」と宣言し、国や自治体に対して啓発活動や相談態勢の整備を義務付けた。しかし、刑事罰を伴わない理念法にとどまったことから、実効性を巡る議論は現在も続いている。
人権擁護を管轄する法務省の調査によれば、街頭での露骨な街宣活動は一定の減少を見せたものの、悪意はインターネット空間へとなだれ込んだ。これに対し、日本弁護士連合会は刑事罰の導入や包括的な差別禁止法の制定を繰り返し提言している。法による介入の範囲をどこまで広げるべきか、表現の自由との均衡を保ちつつ法的枠組みをいかにアップデートするかが問われている。