寺島しのぶが歌舞伎について語る言葉には、常に嘘がない。伝統に対する深い尊敬がありながらも、外部の厳しい目を持つ女優として、その閉鎖性や旧態依然とした体質に対して毅然と意見を述べることもある。この「身内でありながら批評家である」という彼女独自の立ち位置こそが、歌舞伎界にとっても極めて貴重な刺激となっている。
歌舞伎座の客席に腰を下ろし、父や弟、そして息子の舞台を見つめる彼女の眼差しはあたたかく、そしてどこまでも厳しい。芸の厳しさを誰よりも知る彼女だからこそ、息子の稽古には妥協を許さない指導を見せる一方で、古典の型に縛られすぎず、現代を生きる一人の人間としての魅力を磨いてほしいという切実な願いを抱いている。