悲劇の真っ只中に置かれたフリージャーナリストの後藤健二氏は、過酷な紛争地域で生きる人々の日常と声を世界に届けることに情熱を注ぎ続けていた。戦火に晒される子供たちや難民の惨状をレンズ越しに見つめ、命の尊厳を問い続けた彼の取材姿勢は、多くの人々の心を動かした。極限のシリアに潜入した背景には、過激派に拘束された友人を救出したいという切実な想いと、現地で進行する不都合な真実を記録しなければならないというジャーナリストとしての強い義務感があった。
彼が消息を絶ったのち、NHKや英BBC Newsをはじめとする国内外の報道機関は連日連夜、悲痛な現地情勢と交渉の難航を伝えた。命をかけた取材活動がなぜ凶行によって途絶えなければならなかったのか。後藤氏の悲劇的な死は、過酷な現地報道に身を投じるジャーナリストの安全確保という世界共通の課題を、重く突きつける結果となった。