インターネット上で「視能訓練士はやめとけ」と強く主張される背景には、単なる個人の愚痴にとどまらない、医療業界の構造的な歪みが存在します。関係者の証言や現場取材で見えてきた理由は、主に以下の3点に集約されます。
第1の要因は、個人眼科クリニックにおける極端な閉鎖空間と人間関係の固定化です。視能訓練士の過半数は街のクリニックに勤務します。そこは院長(医師)が絶対的な権力を持つトップダウン組織であり、スタッフ数も数名から十数名程度。一度でも人間関係がこじれたり、院長夫妻との相性に齟齬が生じたりすると、逃げ場が完全に失われます。SNSや掲示板で散見される「後悔した」「精神的に追い詰められた」という声の大半は、この狭小なコミュニティ内でのハラスメントや孤立に起因しています。
第2に、看護師や無資格検査助手との「職域の曖昧さ」による摩擦が挙げられます。視能訓練士法に基づく法定業務があるものの、現場クリニックではコスト削減のためにパートの無資格助手にオートレフなどの一次検査を代行させるケースが少なくありません。「苦労して難関の国家資格を取得したのに、無資格スタッフと同じ作業ばかりを指示され、プライドが打ち砕かれた」という若手の嘆きは後を絶ちません。
第3は、キャリアアップに伴う昇給の「天井(ガラスのシーリング)」が極めて低い現実です。病棟を持たない無床診療所の場合、夜勤手当や当直手当が存在しません。初任給こそ一般的な大卒初任給と同等かやや高めに設定されているものの、30代、40代になっても基本給がほとんど上がらないクリニックが多く、ライフステージの変化に収入が追いつかなくなる焦燥感を生んでいます。