重箱の中で強烈な存在感を放つあの独特なフォルムから、「昆虫の幼虫ではないか」「人工的に成形された練り物ではないか」と誤解される事例が後を絶ちません。しかし、チョロギの正体と真相を生物学的に辿ると、正真正銘の天然野菜であることが分かります。
植物分類学上、チョロギはシソ科植物(学名:Stachys affinis)に属する多年草です。私たちが口にしている部分は根ではなく、土の中に伸びた地下茎の先端が球状に連続して肥大化した「塊茎(かいけい)」と呼ばれる部位に該当します。
では、チョロギが虫に似ている理由は何でしょうか。植物形態学の観点から観察すると、地下茎が伸長するプロセスにおいて細胞分裂がリズミカルに収縮と肥大を繰り返すため、竹の節のような段差がいくつも連なり、結果として巻貝やイモムシを彷彿とさせるアコーディオン状の奇異な外観が形成されます。
土から掘り起こしたばかりの生のチョロギは、鮮やかな赤色ではなく、ショウガやユリ根に近い透き通るような乳白色をしています。あの目の覚めるような紅色はおせち料理用に加工された姿であり、伝統的にはチョロギの梅酢漬けによって、赤シソの天然色素(アントシアニン)を吸収させて染め上げているのです。
原産地は中国の華北から華南地域とされ、日本へ渡来したのは江戸時代の元禄年間(17世紀末)頃と伝えられています。当時の本草書『大和本草』(1709年・貝原益軒著)にもその存在が記録されており、300年以上にわたって日本列島で栽培され、食されてきた確固たる歴史を持ちます。