学術的な辞書に掲載されている文字に限定した場合、日本で一番画数が多い漢字として金字塔を打ち立てているのが、合計84画からなる国字(日本で作られた漢字)の「たいと」です。この文字は、冠に「雲」を3つ並べた「とう(𩇔)」を配置し、その下部に「龍」を3つ並べた「とう(龘)」を組み合わせた、圧倒的な視覚的重圧感を持つ構造になっています。
たいと 漢字 84画の読み方としては、「たいと」のほかに「だいと」「おとど」などが伝承されています。文字の意味としては「雲が悠然と立ち昇り、龍が天へ向かって激しく飛翔する様子」を表していると解釈されますが、日常語の動詞や名詞として使われた用例はありません。この文字が公の舞台に登場した歴史的経緯は、辞書編纂の現場における執念の調査記録に端を発します。
昭和を代表する漢和辞典の最高峰『大漢和辞典』(諸橋轍次編、大修館書店)の編纂過程において、補巻にこの84画の文字が収録された際、編纂関係者の調査によって「1960年代初頭、ある証券会社に勤務していた人物の名刺にこの苗字が実際に印刷されていた」という事実が確認されました。当時の法務局や戸籍資料での追跡調査では完全な血統の同定には至らなかったものの、民間での使用実績が物証として提示されたことで、単なる架空の文字ではなく「日本で実在した超多画数文字」としての地位を不動のものにしました。