第130回芥川賞候補となった山崎ナオコーラのデビュー小説と、井口奈己監督が手掛けた映画版では、表現のアプローチに興味深い差異が存在します。
原作小説は、みるめの軽妙で研ぎ澄まされた一人称のモノローグが特徴的で、スピーディーかつドライな文体の中に痛切な叙情が漂います。一方、映画版ではセリフを極限まで削ぎ落とし、長回しを多用した映像美と登場人物たちの「間」「視線の交錯」によって感情のグラデーションを表現しました。
音楽を担当したHAKASE-SUNの緩やかな劇伴も相まって、映画版はより空気感や手触りを重視した、贅沢なシネマティック体験へと昇華されています。