水前寺清子の足跡を語る上で欠かせないのが、1968年にリリースされミリオンセラーを記録した『三百六十五歩のマーチ』と、最高視聴率56.3%という金字塔を打ち立てたTBS系ドラマ『ありがとう』の存在です。
「しあわせは 歩いてこない だから行進して ゆくんだね」という星野哲郎の作詞、米山正夫の作曲による『三百六十五歩のマーチ』は、高度経済成長期の日本に希望を与えただけでなく、阪神・淡路大震災や東日本大震災、そして近年の自然災害からの復興現場においても、被災者の心を支えるアンセムとして歌い継がれてきました。NHK紅白歌合戦に22回出場し、紅組司会も務めた彼女のバイタリティは、まさに戦後日本の活力そのものでした。
また、名プロデューサー石井ふく子が手掛けた『ありがとう』シリーズ(1970年〜1974年)では、婦人警官や看護師といった庶民的な主人公を熱演。山岡久乃、石坂浩二ら錚々たる名優との掛け合いを通じて、日本中のお茶の間を温かい涙と笑顔で包み込みました。歌手としてだけでなく、昭和ドラマ史の頂点に君臨した国民的女優としてのバックボーンがあるからこそ、80歳を迎えた今も彼女の言葉や歌には唯一無二の説得力が宿っています。