現代的な安藤建築と鮮烈なコントラストを成しているのが、敷地内に保存されている国登録有形文化財「望景亭(ぼうけいてい)」です。大正初期、姫路の実業家・濱本八右衛門(濱本鶴女)の別邸として建てられたこの数寄屋風和風建築は、近代和風住宅の粋を集めた空間美を今に伝えています。
望景亭の最大の見どころは、座敷から眺める枯山水庭園と、その借景となる男山の緑です。波打つ大正ガラスを通して差し込む柔らかな光、精緻な欄間の彫刻、茶室「松濤庵」の凛とした佇まいは、コンクリートの現代空間から一歩踏み入れた瞬間に別世界へと誘います。伝統的な日本建築とモダニズム建築が数十メートルの距離で対峙し、見事な調和を保っている景観は、全国の文学館・美術館を見渡しても稀有な事例といえます。
散策の合間に立ち寄りたいのが、南館内に併設された喫茶スペース「カフェ水芭蕉」です。大きなガラス窓から安藤建築の水盤と緑を望むこのカフェは、知る人ぞ知る静寂の隠れ家スポット。ハンドドリップの香り高いコーヒーや、地元播磨の素材を取り入れた和洋スイーツを味わいながら、鑑賞の余韻に浸る贅沢なひとときを過ごせます。