二人の本格的な交錯は、巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーの手がけた不朽の名作『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド 〜汚れなき瞳〜』の日本初演でした。脱獄囚の「男(ザ・マン)」を演じる三浦春馬さんと、彼をイエス・キリストの生まれ変わりと信じる無垢な少女「スワロー」を演じる生田絵梨花さん。製作発表の段階から、日本のエンターテインメント界を牽引するトップランナー同士の共演として破格の注目を集めていました。
しかし、2020年3月といえば、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国の劇場が次々と閉鎖に追い込まれた時期です。公式発表資料によると、当初予定されていたプレビュー公演や前半日程は相次いで中止を余儀なくされ、初日は大幅に延期。最終的に日生劇場で行われた東京公演は全日程のうちわずか11公演にとどまり、その後に予定されていた富山・福岡・愛知・大阪の地方公演は全日程が中止という苦渋の決断が下されました。
舞台関係者の証言によると、いつ幕が下ろされてもおかしくない極限状態のなか、座長を務めた三浦さんと生田さんは「今日が最後のステージになるかもしれない」という覚悟を胸に、一回一回の公演に文字通り命を削って臨んでいたといいます。その鬼気迫る情熱が、観客の心に消えない爪痕を残すことになりました。