インターネット上には「1分でわかる絶対音感テスト・簡易診断」といったWebサイトや動画が無数に存在します。しかし、これらの多くには測定手法上の大きな盲点が存在するため、結果を鵜呑みにするのは早計です。
診断テストを受ける際、最も注意すべきは「基準音なし」で測定されているかどうかです。多くの簡易サイトでは、ピアノの単音が単発で鳴り、それを4択や鍵盤UIで回答させます。しかし、前の問題で鳴った音が脳内に残響として残っている場合、被験者は無意識のうちに直前の音との音程差を計算し、「相対音感」を使って正解を選んでいるケースが多々あります。
真の絶対音感を測定するためには、以下のような厳格なプロトコルが必要です。
- 問題と問題の間に、調性感のないホワイトノイズや無関係な音群を挟んで先行音の記憶を完全に消去する。
- ピアノの特定のサンプリング音だけでなく、倍音構成の異なる純音(サイン波)を用いて周波数そのものを同定させる。
- 0.5秒から1秒以内の即答を求め、頭の中で音階を想起して逆算する時間を排除する。
また、成人がトレーニングによって獲得できる「トーン・メモリー(特定の楽器の音色記憶)」を絶対音感と混同している例も目立ちます。「自分のアコースティックギターの6弦開放音(E音)だけは絶対に当てられる」というのは、楽器固有の音色や胴鳴りの質感を記憶しているに過ぎず、真の絶対音感とは生理学的に区別されます。