忿怒双神の背景にある歴史的な経緯を辿ると、古代インド神話にまで遡ります。もともとインドの土着信仰における夜叉(ヤクシャ)や羅刹(ラクシャーサ)といった強力な戦闘神・鬼神たちが、仏教の隆盛に伴って教団に取り込まれ、仏法を守る「護法善神」へと役割を変えていきました。
日本へと仏教が伝来する過程で、平安時代初期に空海や最澄がもたらした密教体系によって、忿怒尊の思想は劇的な進化を遂げます。激動の時代において、国家安泰や怨敵退散を祈願する武威の象徴として、忿怒の相を持つ神仏は武士階級をはじめとする人々に熱狂的に受容されていきました。恐ろしき力をもって悪を断ち切るという精神性は、数千年の時を超えて現代の表現物にも息づいています。