実際に1999年7月を迎えた瞬間、日本各地の街頭はどうだったのか。当時を記憶する50代の男性はこう振り返る。「渋谷のスクランブル交差点には、ノストラダムスのカウントダウンを理由に集まった若者たちが溢れかえっていた。本気で死ぬと思っていたわけではないかもしれないが、『もし本当に終わったらそれはそれでいい』という投げやりな空気が充満していたのを覚えている」。
1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件以降、終末論を背景にしたカルトの危険性は社会的に強く認知されていた。それにもかかわらず、1999年7月31日深夜23時59分、時計の針が8月1日へと進んだ瞬間、世界は何事もなかったかのように動き続けた。訪れたのは静寂な肩透かしだった。恐怖の対象を失った人々は、翌日から何事もなかったかのように満員電車に揺られて通勤を再開したのである。