ネット通販やカー用品店では、「ベルト鳴き止めスプレー」というスプレー缶が数百円から千円程度で販売されています。「ひと吹きで異音がピタッと止まる」というレビューを見て、車のキュルキュル音の応急処置として吹きかけようとするドライバーが後を絶ちません。しかし、ここには整備のプロが警鐘を鳴らす重大な落とし穴が存在します。
ファンベルト鳴き止めスプレーの効果と注意点を冷静に整理すると、その本質は「粘着剤によって一時的に摩擦力を高め、滑りを誤魔化す表面処理剤」に過ぎません。根本的な原因であるゴムの硬化、ベルトの伸び、プーリーの偏摩耗を修復する能力は一切ありません。
それどころか、スプレーの主成分である粘着物質が走行中の砂埃や微小な異物を巻き込み、プーリーのV溝にヘドロ状の汚れを堆積させます。結果としてプーリーの溝を目詰まりさせ、新品のベルトに交換したとしても再び滑りやすくなるという二次被害を招く事例が多発しています。さらに、プーリーのベアリング自体が摩耗して異音が出ているケースでは、スプレーをいくら噴霧しても全く効果がありません。
鳴き止めスプレーは、「整備工場へ自走して持ち込む直前に、どうしても周囲への騒音を抑えたい」といった緊急避難的な応急処置に限定して使うべきであり、日常的なメンテナンスとして使い続けることは絶対に避けてください。