インターネット上には今なお、「ステロイドを使うと皮膚に毒が蓄積する」「ステロイドをやめれば自然治癒する(脱ステロイド)」といった根拠のない言説が散見されます。しかし、皮膚科診療の現場において、自己判断による急激な脱ステロイドは、重症の紅皮症(全身の皮膚が真っ赤になり熱を持つ危険な状態)や二次感染を引き起こす最大の原因となっています。
ステロイド外用薬の副作用(毛細血管拡張や皮膚萎縮など)は、症状に合わない強さの薬を漫然と年単位で塗り続けたり、適切な医師の指導なしに使用した場合に起こるものです。現代の標準治療である「プロアクティブ療法」では、まず十分な強さのステロイドで一気に目に見える炎症を鎮火させ、その後、徐々に塗布頻度を減らしながらコレクチムやモイゼルト、保湿剤へとスムーズにバトンタッチします。この手法により、副作用のリスクを劇的に抑えつつ、ツルツルの健康な肌状態を維持することが可能になっています。
また、「大人のアトピーは完治するのか」という疑問に対し、医学的な正確な回答は「完全な遺伝的体質の消滅(完治)ではなく、薬を使わなくても、あるいは最小限のケアだけで症状が一切出ない状態(寛解=かんかい)を維持すること」が治療ゴールとなります。高血圧や近視のように上手にコントロールし、日常生活に何ら支障のない肌を保つことこそが目指すべき現実的な成功地点です。