コグニサイズを実践する過程で、多くの指導者や家族が陥りがちな致命的な誤解があります。それは、「課題をミスなくスラスラこなせるようになること」を成功のゴールだと勘違いしてしまう点です。
脳科学の見地から言えば、練習を重ねて課題を完全にクリアできるようになり、何の苦もなく足踏みと計算ができるようになった段階で、脳への刺激は大幅に減少しています。作業が「自動化」されると、前頭前野は省エネモードに移行し、血流量の増加カーブも鈍化してしまいます。
国立長寿医療研究センターが提唱する原則において、もっとも脳が活性化している瞬間とは、「あ、間違えた!」「足と手がこんがらがった!」と脳が混乱し、軌道修正を図ろうと奮闘しているまさにその瞬間です。神経細胞が新たなシナプス回路を必死に模索するプロセスそのものが、脳の予備能(コグニティブ・リザーブ)を鍛え上げます。
ネット上の情報では「正解率を上げるためのコツ」などが散見されますが、これは本末転倒と言わざるを得ません。スムーズにできるようになったら、すぐさま「次は4の倍数にする」「引き算を8ずつにする」といった負荷の再設定(プログレッシブ・オーバーロード)を行い、適度なミスが発生する難易度を意図的に保ち続けることが、真の予防効果を引き出す鉄則です。