佐渡の食文化を語る上で外せない名物「いごねり(地域によっては『えご』とも呼ばれる)」は、日本海の荒波に育まれた紅藻類「エゴ草(学名:エゴノリ)」を主原料とする郷土料理です。その製造工程は極めてシンプルでありながら、熟練の職人技を必要とします。天日干ししたエゴ草を丹念に水洗いしてゴミを取り除き、大釜で煮溶かしながら木べらで粘りが出るまで力強く練り上げます。この「練り」の工程が不十分だと滑らかな舌触りが生まれないため、職人の腕がダイレクトに品質を左右します。
佐渡島内で圧倒的な知名度と信頼を誇るのが、昭和初頭の創業以来、伝統の製法を守り続ける早助屋(そうすけや)です。早助屋のいごねりは、エゴ草の選別から煮詰め、独自の薄延ばし技術に至るまで徹底した品質管理が行われており、地元スーパーの鮮魚・総菜コーナーはもちろん、佐渡島を訪れる観光客の定番お土産としても不動の地位を築いています。余計な凝固剤や着色料を一切使わず、海藻本来の力だけで固めるため、混じりけのない濃厚な海の風味が口いっぱいに広がります。
また、形状によって「巻いごねり」と「角(板)いごねり」の2種類が存在するのも佐渡の特徴です。薄く板状に延ばして冷まし、くるくるとすだれ状に巻いて輪切りにする「巻いごねり」は佐渡島独自のスタイルであり、新潟本土で一般的な四角いブロック状の「角いごねり(えご)」と比べて、口の中でほぐれるような繊細な食感を楽しめます。