ひやむぎの袋を開けると、白の中に鮮やかなピンク(紅)や緑(緑色)の麺が数本混ざっている光景はおなじみです。「当たり麺」として子どもたちの間で取り合いになった記憶を持つ方も多いはずですが、この色麺が導入された背景には、昭和の製麺業界が直面した切実な商業的背景がありました。
昭和30年代から40年代にかけ、製麺機械の性能が飛躍的に向上しました。これにより、家庭用の普及価格帯で大量の乾麺が生産されるようになります。しかし、技術向上によって機械で作られた細身のひやむぎとそうめんは、店頭の透明なフィルム包装越しでは一般の消費者が一目で見分けることが困難になってしまったのです。
そこで大手製麺メーカーが考案したのが、「ひやむぎにだけ色付きの麺を数本混入させる」という識別マーカーの手法でした。赤(シソやクチナシ色素)や緑(抹茶やクロレラ、クチナシ色素)の麺を2本から数本忍ばせることで、消費者がパッケージを一瞥しただけで「これはひやむぎだ」と判別できるようにしたのが発端です。
加えて、視覚的な清涼感や華やかさを食卓に届ける演出効果も手伝い、全国の製麺会社がこぞってこのスタイルを導入しました。近年では包装技術の進化やデザインの洗練により、色麺をあえて入れない「白一色のひやむぎ」も増えていますが、昔ながらの製法を守るメーカーでは、夏の風情を感じさせる伝統的なアクセントとして現在も継承されています。