情報過多の毎日に疲れた脳を休めるため、あえて「何も持たない時間」を作る。現在、この浴場を訪れる多くの若者が目的としているのが、デジタルデトックスだ。脱衣所のロッカーにスマートフォンを預け、ただただ熱い湯と向き合う。湯気の中に立ち込める独特の鉄の香りと、浴槽の縁から溢れ出る湯の音だけが響く空間は、究極のマインドフルネス体験と言えるだろう。
「スマホを見ない時間がこれほど贅沢だとは思わなかった」と、都内から訪れたIT企業勤務の男性(28)は語る。五感が研ぎ澄まされる感覚は、デジタル画面越しでは絶対に得られない生身の体験だ。