アメリカ精神医学会が定める『DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)』において、従来の自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などは「自閉スペクトラム症(ASD)」という単一の診断名に統合されました。境界線を引くのではなく、連続体(スペクトラム)としてグラデーション状に捉える概念です。
医療機関で正式な診断が下される際、主に以下の2大中核領域が詳細に審査されます。
- 社会的コミュニケーションおよび対人相互反応の持続的障害:会話のキャッチボールが成立しにくい、相手の表情や文脈(いわゆる「行間を読む」こと)から感情を推し量るのが苦手、社会的・感情的な相互性の欠如。
- 限定された反復的な行動様式、興味、活動(強いこだわり行動):決まった順序や道順への固執、予定外の事態に対する過度なストレス反応、特定の対象に対する極端に狭く深い関心、常同的な反復動作。
さらに見逃せない要素が「感覚過敏・感覚鈍麻」です。脳の感覚情報処理フィルターの機能不全によって、特定の音(蛍光灯のノイズや金属音)、触覚(服のタグや特定の布地)、光(オフィスの強い照明)、匂いなどに対して過剰に脳が反応し、日常生活が著しく消耗します。これらは性格や気分の問題ではなく、中枢神経系の情報処理特性に起因する医学的事実です。