島の東岸を車で走らせると、巨大な階段のように連なる崖が視界を埋め尽くす。これこそが、過去数十万年にわたる間氷期と氷期の海水面変動、そして地殻変動の積み重ねが刻み込んだ隆起サンゴ礁段丘だ。島全体のおよそ9割以上がサンゴ礁の化石で覆われており、地球の気候変動史を紐解くためのタイムカプセルとして世界的な学術的注目を集めている。
この特異なフィールドに拠点を構えるのが、喜界島サンゴ礁科学研究所だ。所長を務める渡邊剛氏をはじめとする研究チームは、化石化したサンゴの骨格に含まれる微量元素を分析することで、数千年前の海水温や過去の気候変動パターンを詳細に復元している。研究所は単なる学術施設にとどまらず、島内外の若者や旅人に向けたオープンラボやレクチャーを実施しており、訪問者は自らの足元にあるサンゴの岩肌が、地球環境の歴史そのものであることを肌で実感できる。