ヤマドリが市場にほとんど出回らない最大の理由は、生息環境の厳しさと制度上の制約にある。ヤマドリは本州・四国・九州の急峻な山岳地帯を好み、人工飼育が極めて困難だ。そのため、流通しているもののほぼ100%が天然の野生個体である。しかし、野生鳥獣の保護と適正な管理を定めた鳥獣保護管理法により、狩猟期間や1人あたりの捕獲上限数が厳しく制限されている。
さらに、ヤマドリは空を飛んで逃げるのではなく、斜面の地表を弾丸のようなスピードで駆け走る独特の習性を持つ。ベテランのハンターと訓練された猟犬の息が完全に合わなければ仕留めることはできず、たった一羽を得るために何日も険しい奥山を歩き回る必要がある。この捕獲効率の低さと法規制が重なることで、ジビエ精肉・飲食産業への安定供給が物理的に不可能な構造となっているのだ。