高度な匿名化ネットワークであるTor(トーア)の存在も、犯人特定の大きな障害だ。Torを経由した通信は、世界中に散在するボランティアの暗号化サーバーを3段階以上も経由して目的地に届く。入口ノード、中継ノード、出口ノードと多層構造で暗号化されるため、出口ノードで通信内容を解析できたとしても、送信元の端末を特定することは原理的に不可能に近い。
加えて、こうした犯罪ツールや匿名通信のアドバイスはダークウェブ上の闇掲示板で活発に取引されている。特殊なブラウザでしかアクセスできないこの地下社会では、暗号資産を使った取引によって犯罪ツールや使い捨ての送信用アカウントが容易に手に入る。スキルを持たない人間でも、マニュアル通りに操作するだけで世界中に追跡困難な脅迫メールをばら撒ける環境が完成してしまっているのだ。