このブームを語る上で欠かせないキーマンが、ベーカリープロデューサーの岸本拓也氏だ。彼が率いるジャパンベーカリーマーケティング株式会社は、従来のパン屋のイメージを根底から覆すアプローチで話題を独占した。
「考えた人すごいわ」「朝起きたら君がいた」「これ半端ないって」といった一度聞いたら忘れられない店名と、派手なイラストをあしらった外観。これら強烈な店舗ブランディングは、地方都市のシャッター街やロードサイドに即座に行列を作り出す魔法として機能した。同社が手掛けたフードビジネスプロデュースは、パン職人の経験がない異業者であっても短期間で開業できるシステムを構築し、新規参入のハードルを劇的に下げたのである。
話題性を前面に押し出す手法は初期集客において圧倒的な威力を発揮したが、一方で「店名が奇抜すぎてリピートしにくい」「一発屋のイメージがついてしまう」という諸刃の剣でもあった。仕掛け人が提供した強力なロケットスタートを、店舗側がどう持続的な地域密着経営へと接続できたかが明暗を分けることになった。