歌詞の中でひときわ強い異彩を放つのが、「あんたのあばずれ海峡越えてゆく」という強烈なフレーズだ。現代の語感であれば侮蔑や露悪と受け取られかねない言葉を、西岡恭蔵は最高級の賛辞へと昇華させた。社会の枠組みや道徳にとらわれない彼女の野性を「あばずれ」と呼び、それを丸ごと愛おしむ眼差し。ここに、この曲が持つ文学的な奥行きがある。
その言葉の重みを軽やかに宙へ浮遊させるのが、計算し尽くされたシンプルなコード進行だ。基本はGメジャーを基調としたフォークソングの王道でありながら、ラグタイムやスウィングジャズのニュアンスを含んだリズムが、独特の「スウィング感」を生み出す。アコースティックギターを数分かき鳴らせば誰でも弾ける平易なコードでありながら、歌い手の呼吸ひとつで煙のように表情を変える。この極上の引き算の美学が、歌詞の詩情を極限まで引き立てている。