ネット上で「クレー」という言葉を巡って飛び交う言説の中には、いくつかの重大な誤認が存在します。本稿では取材に基づき、それらの盲点を正していきます。
第一の誤解は、「テニスのクレーコートは単なる泥や土のグラウンドである」という認識です。国内の学校の校庭や一部の公営テニスコートに見られる「荒木田土(クレイ)」を使用したコートと、全仏オープンなどの「アンツーカー(赤土)」は全くの別物です。前者は水はけが悪く降雨後は泥濘化しやすいのに対し、本格的なアンツーカーは透水性と保水性のバランスが極限まで計算された工芸品に近いサーフェスです。これを同一視してシューズやギアを選ぶと、大きな失敗を招きます。
第二の誤解は、「原神のクレーの名前は土(Clay)から名付けられた」という言説です。一部の掲示板等で「泥まみれの火花騎士だからクレー」という俗説が見受けられますが、これは完全な誤りです。前述の通り、公式の英語綴りは「Klee」であり、キャラクターデザイン全体に散りばめられた「四つ葉のクローバー」とドイツ語の原義(Klee=シロツメクサ)が完全に一致しています。
第三の誤解は、「クレー射撃の皿は現在も本物の粘土(クレー)で作られている」という思い込みです。近代のクレー射撃で使用される標的(クレーピジョン)は、環境負荷を低減するため石灰石とピッチ(石油系樹脂)を主原料とした成形品、あるいは生分解性の特殊素材が主流となっています。粘土皿を投げていた19世紀末の歴史的呼称が、競技名として今も継承されているに過ぎません。