『火垂るの墓』が公開から何十年経っても色あせない最大の要因の一つが、節子の声優を務めた白石綾乃(しらいし あやの)さんの演技です。アニメ業界では前例が極めて少なかった「キャラクターと同年代の子供を起用する」という高畑監督の強いこだわりによってオーディションで抜擢されました。
当時、白石さんはわずか5歳(収録時)。関西出身の彼女が発する「兄ちゃん、お腹すいた」「なんで蛍すぐ死んでしまうん?」という関西弁のイントネーションや、息遣い、泣き声は、大人のプロ声優では絶対に再現不可能な圧倒的なリアリティを作品にもたらしました。台本を読むのではなく、スタッフが状況を説明して引き出した自然な感情表現は、映画のドキュメンタリー的質感の根幹を支えています。
白石さんの「現在」については、長年ネット上でも様々な憶測が飛び交ってきました。しかし公式記録や関係者の証言によると、白石さんは本作の出演・プロモーションを最後に子役・芸能活動を引退しています。その後は一切メディア露出を行わず、一般人として穏やかな人生を歩まれています。わずか5歳にして世界のアニメーション史に刻まれる名演を残した彼女の存在は、今なおレジェンドとして語り継がれています。