犯人グループがなぜ大金を要求するだけでなく、主人公のビル・マークスを執拗に犯人へと仕立て上げたのか。そこにはトム・ボーウェンの歪んだ愛国心と復讐心が深く関係していました。
トムは2001年の9.11同時多発テロで父親を亡くした遺族でした。国家があれほどの大惨事を経験したにもかかわらず、その後の航空警備体制は形骸化し、搭乗している航空保安官の実態はビルをはじめとするアルコール依存や問題を抱えた人材ばかりであることに激しい怒りと絶望を抱いていました。
トムの狙いは「大惨事を再び引き起こすことで、アメリカ国民に航空保安体制の脆弱性を思い知らせ、国家の安全保障を根本から見直させること」だったのです。そのために、過去のトラウマで精神的に不安定であり、過去の経歴からも世間から疑われやすいビルをスケープゴートに選定。指定口座をビルの名義に設定し、あたかも「心身を病んだ保安官が金を脅し取るために旅客機を乗っ取った」かのようにメディアや政府を誘導しました。
一方、共犯のザック・ホワイトには思想的な動機はなく、純粋に「巨額の身代金1億5000万ドルから得られる分け前」が目的でした。思想犯と金銭目的の犯罪者が結託した結果、冷酷かつ計算し尽くされたハイジャック劇が生み出されたのです。