ファンの間で幾度となく議論される「プロ野球史上最強のショートは誰か」という問いに対しては、評価軸を守備力に置くか、打撃を含めた総合力に置くかで答えが分かれます。
純粋な守備力という観点において、現代のデータアナリストと往年のファンが一致して推すのが源田壮亮です。セイバーメトリクスにおける守備指標UZRにおいて、全盛期の源田が叩き出した年間数値(+20点以上)は突出しており、三遊間のゴロをまるで当たり前のように正面でさばく柔らかいグラブさばきと、捕球からトップへの無駄のない送球動作は球界の教科書となっています。これに並び称されるのが、阪神タイガースの黄金期にグラウンドを跳ね回った吉田義男であり、名将・野村克友をして「吉田の守備だけで入場料が取れた」と言わしめた伝説を持ちます。
一方、攻守の総合力で頂点に君臨するのが坂本勇人です。遊撃手としてプロ野球史上初となる右打者での首位打者獲得(2016年)や、40本塁打(2019年)、さらには榎本喜八に次ぐ史上2番目の若さでの通算2,000安打達成など、打撃記録は他の追随を許しません。若手時代は送球難やイップス気味の悪送球に苦しんだものの、井端弘和らの熱心な指導を受けてグラブの出し方を劇的に改善し、円熟期には名手としてのゴールデングラブ賞常連へと登り詰めました。
また、走攻守すべてが規格外だった松井稼頭央、そして15年以上にわたり極度のプレッシャーと甲子園の土のグラウンドに耐えながら出場を続けた鳥谷敬の存在も外せません。歴代最強ショートの議論は、これら個性の異なる天才たちがそれぞれの時代で残した強烈な足跡の比較そのものです。